松尾久美 ピアノリサイタルプログラム解説 

プログラム解説

クロード・ドビュッシー(1862-1918)

Claude Debussy

生粋のフランス人作曲家として、独自の色彩感覚と革新的な和声法によって20世紀音楽の磯を築いた。フランス印象派を代表する

作曲家の一人とされているが、印象派のみならず象徴派からの強い影響も受けている。パリ万国博覧会で出会った東洋音楽や当

時流行っていたジャポニズムに魅了され、それらを自身の作品に巧みに取り入れた。管弦楽「海」の表紙は葛飾北斎の「神奈川沖

浪裏」が採用されており、ピアノ曲集「版画」の「金魚の魚」は錦鯉が描かれた日本の金蒔絵の箱から着想を得ている。

見出された練習曲

Étude retrouvée

元々はプログラム後半に演奏する「12の練習曲」のために書かれたが、作曲を途中で断念。後に発見された未完のスケッチをもと

に、スコットランド人のピアニスト兼、音楽学者のロイ・ホワットによって補筆・校訂され、1980年にテオドール・プレッサーから刊行さ

れた。

フレデリック・ショパン(1810-1849)

Frédéric Chopin

ポーランドのワルシャワ出身でロマン派を代表する作曲家の1人。ウィーンでの演奏旅行中にワルシャワ蜂起による革命が勃発し、

フランスへ亡命。その後祖国に再び戻ることはなかった。パリの中流階級サロンでピアニストとして活躍する一方、ピアノの弟子を多

く抱えていた。ポーランドの民族舞曲や旋律を歌った数々のピアノ作品は今日も多くの人に親しまれ、ワルシャワで5年に一度開催さ

れる「ショパン国際ピアノコンクール」は若手ピアニストの世界最高峰のコンクールとされている。

12の練習曲 作品25

12 Etudes Op.25

ショパンは全27曲の練習曲を作曲。ワルシャワからパリへ亡命する最中に作曲された作品10の全12曲に続き、パリの音楽サロンで

人気を博していった時期に書かれた今回演奏する作品25の12曲。また「新練習曲」のタイトルで別に3曲が出版されている。19世紀

ドイツ・ロマン派を代表する作曲家ロベルト・シューマンはショパンの作品25を「練習曲というよりも詩だ。」と賞賛。ヨハン・セバスチャ

ン・バッハの長短24調の前奏曲とフーガで構成される「平均律クラヴィーア」から着想を得ている。作品10はハンガリー出身のピアニ

スト、作曲家のフランツ・リストに、作品25はリストの愛人マリー・ダグー伯爵夫人にそれぞれ献呈されている。

1 変イ長調 「エオリアンハープ」

No.1 A-flat Major “Aeolian harp”

2 ヘ短調

No.2 F Minor

3 ヘ長調

No.3 F Major

4 イ短調

No.4 A Minor

5 ホ短調

No.5 E Minor

6 嬰ト短調

No.6 G-sharp Minor

7 嬰ハ短調

No.7 C-sharp Minor

8 変ニ長調

No.8 D-flat Major

9 変ト長調 「蝶々」

No.9 G-flat Major “Butterflies”

10 ロ短調

No.10 B Minor

11 イ短調 「木枯らし」

No.11 A Minor “Winter wind”

12 ハ短調「大洋」

No.12 C Minor “Ocean“クロード・ドビュッシー

Claude Debussy

12の練習曲

Douze Études

デュラン社からの依頼を受けショパンの練習曲集の校訂を行ったドビュッシーは、半年後に「12の練習曲」を作曲。ドビュッシーから

直接教えを受けたピアニスト、マルグリット・ロンは「とくにショパンのこととなると、ドビュッシーの話は尽きることがないのです。その

演奏を通じてショパンの心が骨の髄まで沁み渡り、ショパンに取り憑かれているようでした。」と述べている。バロック時代のフランス

人作曲家フランソワ・クープランに献辞する予定だったが、「ショパンの追憶に」に変更。ドビュッシーは指使いは演奏者自身で見つ

けるべきだと断言しているが、「八本の指のための」に限って親指を使用しないように注釈を入れている。「12の練習曲」はドビュッ

シー最晩年の作品で、第一次世界大戦が勃発する最中、癌を煩いながらも創作意欲を振り絞り、2ヶ月ほどで書き上げたと言われ

ている。

1 Livre I

1.五本の指のための/チェルニー氏に倣って

pour les “cinq doigts” d’après Monsieur Czerny

2.三度のための

pour les Tierces

3.四度のための

pour les Quartes

4.六度のための

pour les Sixtes

5.オクターブのための

pour les Octaves

6.八本の指のための

pour les huit doigts

2 Livre II

7.半音階のための

pour les Degrés chromatiques

8.装飾音のための

pour les Agréments

9.反復音のための

pour les Notes répétées

10.対比的な響きのための

pour les Sonorités opposées

11.組み合わされたアルペッジョのための

pour les Arpèges composés

12.和音のための

pour les Accords

(解説:松尾久美)